※この投稿はニュースレター「道草通信|07」で配信した内容に加筆修正して掲載しています。
先日のこと。
用事を済ませた帰り道。あんまりお天気が良くて、あたたかくて、このまま帰ってしまうのもなぁとずっと気になっていた山添村の鍋倉渓に寄ってみた。
きっと季節のいい時期にはトレッキングの人たちも多いのだろうけど、紅葉も終わりかけの時期、誰もいなかった。喧嘩をした天狗たちが投げ合ったと民話に書かれている、大きな岩がなだらかな山の斜面にゴロゴロとつづいている。その横に遊歩道が設置されて歩くことができるので、少し歩いてみることにした。
真っ青に高い空に雲が流れていく。あたりを見渡すと、もうすっかり葉を落とした木々が木立に混じりはじめていた。あたたかな日が多い今年の冬だけど、それでも森は着実に冬へと装いを変化させている。
その様子をじっくりと眺めながら、あぁわたしの好きな森の季節がやってくるとうれしく思った。
よく森へと通うようになって、知ったこと。冬の森の静けさの特別さ。
他の季節でも森の深い静けさ特別だと感じるだけれど、冬の森の静けさはまた別格に感じる。水辺があれば冬鳥たちがその静けさを一層引き立てるように思う。時おり響く鳴き声に耳を澄ませ、その音が消えたあとの静寂を深く味わう。シルエットをあらわにした木々は、葉を茂らせているときより存在感を増し、でも無言でたたずんでいるかのよう。
そんな冬の森がわたしはとても好きだ。それに気づいたこともまた、森に通うようになって知ったことのひとつ。