『椿宿の辺りに』 梨木香歩 / 朝日文庫
梨木さんのエッセイ『やがて満ちてくる光の』を読んでいたら、小説が読みたくなった。
飛行機に乗る予定があって、旅のお供にと本屋さんに行ってみたら文庫が販売されていたので購入。以前に単行本が出た頃に図書館で借りて読んだことがあったけど、今回の方が面白かったなと感じた。
”いつも移動を続け、定まらないツボがあります、椿宿、です、、、” 定まらないツボと呼ばれた椿宿は場所として存在していて、その異変が主人公の山幸彦の心身へと痛みを引き起こしているのだけれど、個人は個人として成り立つものでもなく、全体のなかで、人との関係はもちろん、場所や時の経過の中で起きた出来事ともつながりながらあるということ。その深さと広さを感じさせながら終わっていく感じもよかったな。
そしてわたしは旅路の移動を続けていて、風景が変わりながら読み進む感じもどこかリンクしていて旅のお供にぴったりでした。
ちなみにこの本は『f植物園の巣穴』のその後でもあるらしい。